介護概論
高橋 陽子・初貝 幸江
T.授業概要
介護福祉士が専門職として法制度化されて18年になります。高齢者人口の増加で施設福祉中心から在宅福祉へのニーズが高まり、介護福祉士の活動の場が施設中心から在宅へと広がってきました。そして2000年から始まった「介護保険制度」により介護福祉士養成のカリキュラムも改正されました。これは介護福祉士に対する社会からの要請が高いことを意味します。
介護とは、援助を必要としている人々を生活面から支え、暮らしを整えることです。それは一人ひとりの一回限りの人生、またその人にしか出来ない可能性、その人の自己実現にかかわる過程を通して行われるものです。私たちはどんなときでも人間らしく生活し、しかも自分らしい人生を全うしたいと願うからです。特に何らかの原因から、障害を持ったり、高齢になったときなど特に強く願うものです。それだけに、いかなるときでも、どのような人でも、どのような援助を受けるかということが大きな問題です。それはまた介護者にとっての課題です。何故ならその援助を担う人の、自らのあり方にあるからです。対象者のおかれた立場にどれだけ立てるか、どのような介護が必要かを判断する知識と技術力が援助の質、援助を受ける人々の生活の質を決める鍵になるからです。
介護福祉士は職域や役割の拡大と共に、専門的知識、技術、倫理性をより求められ、他の専門職種とのチームワークなしでは介護の効果は上げられないものです。
本講義は、介護福祉という専門分野の内容についてその目的、機能、範囲、方法など総括的に述べつつ介護とは何かを学んでいきます。
U.テキスト及び参考書
新版介護福祉士養成講座11 「介護概論」 中央法規出版
参考書は授業の中で紹介します。
V.評価方法
前期・後期共に下記の観点から総合的に評価します。
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授業態度・出席 A課題レポート B定期試験
W.履修上の留意事項
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遅刻・欠席のないようにすること。
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シラバスを参考にして予習を十分にして授業に臨むこと。
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提出物の期限は厳守すること。やむをえない事由以外は遅れた場合は受け取りません。
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新聞、TVなど介護に関係する記事やニュースに常に関心を持つこと。
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福祉・保健・医療の関する講演会・シンポジウム等に積極的に参加し視野を広めること。
授業計画
回 |
テーマ |
授業項目 |
授業内容 |
授業の準備 |
1 |
はじめに |
介護概論を学ぶ意義 |
これからの1年間で学ぶ介護概論の授業内容と他教科との関係を知る。 キーワード集の説明と活用方法について |
シラバスに目を通してくる。 |
2 |
第1章 介護福祉に おける介護概論の意義 |
1.人と生活 |
人間の一生における発達過程の意味を知り、人間の理解を深める。 |
配布資料及びテキスト第1章を読んでくる。 |
3 |
2.介護の社会化と介護福祉 |
介護の社会化・専門職化への要因と動きを理解し、専門職としての介護福祉士に求められているものを考える。 |
福祉小六法 「社会福祉士及び介護福祉士法」 |
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4 |
第2章 介護の概念 |
1.介護の理念と定義 1)介護の対象 2)介護の理念 |
障害のとらえ方 自立のとらえ方について理解する。 ノーマライゼ―ションの理念と介護理念の関係について理解する。 自己実現について−A・Hマズロー |
ICIDHとICFの違いについて調べる。 「自立」とは、「ノーマライゼーション」とはなにか |
5 |
3)介護の定義 |
社会福祉関係法規に見られる「介護」とは |
福祉小六法 |
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6 |
1.
介護の倫理 2.
介護の専門性 |
@社会福祉士及び介護福祉士法の倫理 A日本介護福祉士会の倫理綱領 |
「倫理」とはなにか |
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7 |
第3章 利用者の理解と援助関係 |
1.利用者との援 助関係を築く基本 |
自分を知る。(自己覚知) 気づきの重要性 |
配布された資料に記入してくる。 |
8 |
2.日常生活からみた利用者の理解 |
老いや障害を偏見なく受け入れ、利用者を理解する為に、さまざまな状態像を包括した日常生活を知る。 |
ADL・IADLとはなにかを調べてくる。 |
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9 |
3.健康を維持する側面から見た利用者の理解 |
・恒常性、適応について理解する。 ・高齢者・障害者の身体的・心理的・社会的 特性を理解する。 |
ホメオスターシスについて調べてくる。 |
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10 |
第4章 介護援助の方法 |
1.身体的生活援助 1)食事・排泄の意義 |
・自己の食生活の実態を知る。 ・排泄の意味を理解する。 |
食事記録を記入してくる。 |
11 |
2)睡眠休息・身体の清潔 |
・睡眠の意味を理解する。 ・清潔を保持する重要性を考える。 |
清潔について考える。 |
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12 |
3)運動移動・衣類・ 装い |
・運動移動がもたらす効果を理解する。 ・利用者の装いについて考える。 |
「介護技術」の運動移動を見直しておく。 |
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13 |
2.社会・文化的生活 援助 3.居住環境の整備 |
・伝統・年間行事を理解し介護に役立てる。 ・居住環境整備の目的、方法、条件、福祉用具の活用を知り、利用者の自立、QOLとの関係を理解する。 「家政学概論」を参照。 |
日本の伝統的行事を調べてくる。 |
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14 |
試験 |
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まとめ |
回 |
テーマ |
授業項目 |
授業内容 |
授業の準備 |
16 |
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4.家庭経営・管理 |
・家庭の意味を知り経営・管理を理解する。 ・成年後見制度・地域福祉権利擁護事業を理解する。 |
「老人福祉論」を見直しておく。 |
17 |
5.相談援助 6.救急・事故時の対応 |
・相談援助の方法について知る。 「社会福祉援助技術」参照 ・高齢者の身体変化の特徴と、主な事故と の関連を知る。 「上級救命技能認定講習」参照 |
配布した資料を整理する。 |
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7.終末期の介護 |
・ターミナルケアを理解し対象と家族へのケアについて学ぶ。 ・自己の死生観を考える。 |
終末期の関り方を考えてくる。 |
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第5章 介護過程の概要 |
1.介護過程とは |
・介護過程とはなにか ・介護過程の意味 |
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21 22 23 |
2.介護過程の展開技法 1)介護における観察とは 2)介護的観察の3つの側面 3)観察の実際 |
・観察項目各々について具体的な観察事項をワークショップを通して考え、発表する。 ・自己を観察し、記録する。 |
具体的な観察項目を記入してくる。 |
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24 |
第6章 さまざまな場における介護 |
1.在宅における介護活動 |
・訪問介護の目的・意義・役割 ・通所介護・通所リハビリテーション ・短期入所施設における介護 ・グループホームにおける介護 |
テキストを読んでくる。 |
25 |
2.施設における介護活動 |
・施設介護をめぐる動向 ・リスクマネージメント |
1段階実習での体験を整理 |
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26 27 |
第7章 他職種との連携 |
1.チームワークの必要性 2.記録と情報の共有化 3.医療関係者 4.地域における連携 |
・チームとは ・チームメンバーは誰か ・口頭伝達と記録のメリット等 ・法的な決まりごと ・地域社会資源とは |
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第8章 介護従事者 の健康と 安全 |
1.心身の健康管理 2.介護従事者の健康問題 |
・健康管理の意義と方法 ・感染予防 ・腰痛対策 労働基準法 労働安全衛生法 |
自分の健康についてリポートする。 |
29 |
試験 |
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30 |
まとめ |