介護技術
初貝幸江・古屋なおみ・井上順子・高橋陽子
T.授業の概要
1. 位置づけ・目的
介護とは実践の問題であり、介護する人が介護を必要とする人へ、ひとつの行為として提供されるものです。介護技術は、その行為の表現手段と言えます。
介護技術を学ぶ上での基盤となるものは、いうまでもなく対象である「人間の理解」にあります。その事をふまえ、科学的知識に裏づけられた、確実な技術を習得する事が重要です。さらに、人が人へ技術を提供するということは、介護する人と、介護を受ける人の心が通いあったものであることが求められています。
介護技術は、広く生活全般にわたっており、生活者として対象をとらえ、加齢や障害があっても、その人らしく、自立した生活が送れるように援助することが大切です。
対象の状態を把握し、その対象が必要としている介護を判断し、対象にあった方法で安全に、安楽に実施し、その結果を評価できる能力を身につけられるようにします。
2. 方法・特色・内容
介護技術は1年前・後期、2年前期にわたり教授されることから、介護概論、家政学概論、老人・障害者の心理などの諸科目との関連性を十分に考え、技術として統合できるようにします。また、今後、益々重要となる在宅における利用者への介護についても十分に考慮し、各々の単元において、必要な技術を学習していきます。さらに、学内のみの学習ではなく、介護福祉機器や住設備機器については、国際福祉機器展や常設の展示施設など最新の情報に接することができるように計画しています。
受け身の姿勢で授業に臨むのではなく、「自分で考え、工夫する」姿勢で、積極的に学習してください。
U.テキスト 三訂 介護福祉士養成講座13 「介護技術」 中央法規出版
V.評価方法
授業態度・出席 (2)レポート・介護演習記録 (3)定期試験(筆記及び実技試験)
尚、定期試験(筆記)は以下のように分けて行います。
1年前期 @ コミュニケーション・観察・ボディメカニクス・移動介護
1年前期 A 環境の整備・外出への援助・食事の介護
1年後期 B 排泄・衣生活の介護・安楽安寧への援助
1年後期 C 清潔の介護・褥瘡
2年前期 D 医療看護と介護・緊急事故時の対応・終末期の介護・介護過程
定期試験(実技)は1年前期および1年後期に行います。
授業計画
回 |
テーマ |
授業項目 |
授業内容 |
授業の準備 |
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1. コミュニケーション |
1)コミュニケーションとは 2)コミュニケーションに影響する因子 3)よいコミュニケーションを図るための介護者の姿勢と方法 4)具体的なコミュニケーションの図り方 |
・介護の展開に必要なコミュニケーションの重要性と方法を理解する。 ・よいコミュニケーションを図るための傾聴の姿勢を理解する。 ・ロールプレイを活用し、具体的な場面でのコミュニケーションについて学び、表現技法を学ぶ。 |
日常生活上どのようなコミュニケーション手段を用いているか確認しておく。 |
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2. 快適な生活環境の整備 |
1)環境とは 2)対象の状態にあった住まいの構造 3)室内環境 4)プライバシーの尊重 5)環境整備の方法 6)衣類・寝具の管理の 方法 |
・人が生活を営むうえで、環境のもつ意義について理解する。 ・対象にあった環境を整える方法(ベッドメーキング、シーツ交換など)を習得する。 ・福祉用具の意義、概要を理解し、対象にあった福祉用具の選択、活用及び管理に関する援助能力を習得する。(9月に国際福祉機器展の見学学習も取り入れる。) ※各単元(テーマ4,5)において、これらの内容理解を深める講義内容を盛り込む。 |
自分の住まいの環境をよく観察し、何が快適で、何が快適でないか書き出してみる。 |
回 |
テーマ |
授業項目 |
授業内容 |
授業の準備 |
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3. 状態変化/不調の徴候の観察 |
1)観察の手段 2)観察の方法 @生活のリズム Aバイタルサイン B食事 C排泄 D感覚機能(視覚、聴覚及び知覚 E皮膚・粘膜 F姿勢・動作能力 G睡眠と活動 H理解力・判断力 I感情 |
・対象の状態を観察し、異常が早期発見できる能力を身につける。 ・人間の生理機能と関連させながら、裏づけのきちんとした観察ができるようにする。 |
自分が健康である証は何か考えてくる。 |
15 16 |
4. 社会生活の維持拡大への援助 |
1) 生活拡大の意義 2) ボディメカニクス |
・社会とのつながりをもった生活の重要性を理解できるようにする。 ・移動動作に必要な身体の動きについて学習し、具体的な技術に応用できるようにする。 |
身体構造を意識し移動動作を確認する。 |
17 18 |
3)
移動補助具使用時の介助 @杖歩行 A歩行器 B車椅子 Cストレッチャ― Dリフト |
・各々の補助具のもつ特徴、対象別使用を理解し、構造、使用時の留意点を学び実際に操作できるようにする。 |
様々な補助具を試用し実践の準備をする。 |
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4) ベッド上での移動介護 @よい姿勢と体位 A体位変換の必要 性とその方法 B臥位〜起座位 Cベッド〜車椅子 D座位〜立位 E布団(和室)の場合の 方法 |
・ボディメカニクスの原理を活用しながら安全、安楽に移動できる技術を習得する。 |
車椅子の各部名称と体位名称を理解しておく。 |
回 |
テーマ |
授業項目 |
授業内容 |
授業の準備 |
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5) 機能維持のための運動への援助 @関節可動域の維持 A筋力の保持・増強 B援助の方法 ・他動運動 ・自動介助運動 ・自動運動 |
・人間の筋肉、関節の特性を理解し、機能を維持拡大するための方法を習得する。 |
テキストを読んでおく。 |
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23 24 |
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6) 社会との関わりへの 援助 @集い等への参加 A外出への援助 乗り物(バス、電車、自動車) エレベーター エスカレーター |
・社会との関わりを広げていくことの必要性を理解し、実際に社会の現状を知るために車椅子、杖歩行などでの外出を体験し、話し合う。 |
通学経路のバリアフリーについて調べてくる。 |
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5. 日常生活における基本的な介護 |
1) 食事の介護 @食事のもつ意味 A食事に影響する要因 B食生活についての観察の視点 C食事内容への 配慮 摂取エネルギー、栄養素、調理方法、の予防 D食事摂取動作への援助 場所・姿勢、誤嚥の予防 自助具など |
・人間にとって、食事は生命を維持していくうえに不可欠なものであると同時に、生きていく上での楽しみでもあることを理解し、対象の生活歴を大切にしながら援助できるようにする。 ・「家政学概論」「家政学実習」と関連させながら、すすめる。 ・在宅の利用者を想定し、和室での食事介助(姿勢の保持、食器などの物品の工夫)についても考える。 |
咀嚼(そしゃく)嚥下(えんげ)とは何か調べてくる。 |
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試験 |
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30 |
まとめ |
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回 |
テーマ |
授業項目 |
授業内容 |
授業の準備 |
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31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 |
5. 日常生活における基本的な介護 |
2) 排泄の介護 @排泄のもつ意味 A排泄のメカニズ ム B排泄の自立と 障害 C排泄に障害をもつ人の心理 D排泄環境 E観察の視点 F排泄の自立度に応じた介護 ・ベッド上及び布団の上での介護(便器、尿器、オムツ) ・ポータブルトイレへの移動が可能な場合 ・トイレへの移動が可能な場合 G尿失禁に対する介護 ・排泄自立へ向けて
H便秘、下痢時の対応 |
・排泄は人間の尊厳と密接なつながりがあることを理解し、障害を持った人の心理を充分に受け止め介護できるようにする。 ・対象の状況に合わせた介護、さらに自立へ向けての介護ができるようにする。 |
見学した高齢者施設のトイレ環境の特徴を書いてくる。 おむつを装着し、排泄してみる。 |
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41 42 43 44 |
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3) 衣生活の介護 @衣生活のもつ意味 A衣類の基本的条件 B対象にあった衣類の工夫 C着脱時の留意点 D着脱の実際 ・臥位の場合 ・座位の場合 |
・衣生活は単に身体を被うだけのものでなく、その人らしさを表現するものでもある。人にとっての衣生活のもつ意味を理解し、対象にあった衣類の選択ができ、日常生活における着脱が適切に援助できる技術を習得する。 |
テキストを読んでおく。 |
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回 |
テーマ |
授業項目 |
授業内容 |
授業の準備 |
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45 46 47 48 49 50 51 52 53 |
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4) 清潔の介護 @清潔のもつ意味 A清潔に影響を及ぼす 因子 B身体の清潔保持の方法 ・入浴の介護 (シャワー浴を含む) ・入浴が身体に及ぼす 影響 ・入浴可否の判断 ・入浴介護の実際 (家庭浴槽、施設における機械浴、在宅における簡易浴槽) ・全身清拭 ・部分浴(陰部、手浴、 足浴) ・洗髪 ・口腔(義歯を含む) ・目、耳、鼻、爪 |
・清潔保持の必要性を理解し、対象の状態に応じた清潔保持の方法が判断でき、安全・安楽に実施する技術を習得する。 ・在宅(和室で布団に臥床中)の利用者を想定し、清拭、洗髪、口腔の清潔などについて実施する。 |
1段階実習での入浴介護を振り返る。 |
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54 55 |
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5) 褥瘡 @原因 A好発部位 B観察の方法 C予防のための 介護 D手当の方法 |
・予防の重要性を強調する。 ・観察、予防のための方法について具体的に指導する。 |
1段階実習での体験を振り返る。 |
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56 57 58 |
6. 安楽・安寧への援助 |
1)
安楽な体位の工夫と方法 2) マッサージ @効果 A方法 3)罨法 @温罨法 A冷罨法 4)安眠への援助 @安眠を妨げる 因子 A不眠の徴候の 観察 B安眠への援助 |
・人が「心地よい」と感じられるような状況を作り出すための技術を習得する。 |
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試験 |
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60 |
まとめ |
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回 |
テーマ |
授業項目 |
授業内容 |
授業の準備 |
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7. 医療・看護と介護 |
1) 医療機関との 連携 @異常の発見と医療とのかかわり方 A医療機関とのかかわり方 |
・医療、保健、福祉チームの一員として自分の役割と責任を理解し、医療機関との連携を充分にとりながら行動できるようにする。 |
22段階実習で医療職とどのように連携をとっていたかをまとめてくる。 |
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2) 医療処置・器具使用時の介護 @介護福祉士の 役割 A管理上の留意点 |
経管栄養、吸入器、吸引器、酸素吸入、膀胱留置カテーテル、気管カニューレ など |
形態別介護技術「内部障害のある利用者の介護」を復習 |
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64 65 |
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3) 薬の管理と与薬時の介護 @薬物の基礎知識 A薬の管理 B服薬時の介護 C与薬の援助 |
薬物に対する介護福祉士の役割はなにかを考える。 |
介護と医療行為に関する文献を探し、読んでくる。 |
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8. 緊急事故時の対応 |
1) 介護の場で生じる可能性のある緊急事故 2)事故予防のための生活環境のアセスメント 3)事故時の対応 4) 応急手当の方法 [救急法] 心肺蘇生法 包帯法 |
・事故の防止に努めることの重要性と、万が一生じた場合の対応の方法について学ぶ。 @ 呼吸困難 A 出血 B 創傷 C 疼痛 D 意識障害 【上級救命講習受講】 上級救命技能認定証を 取得する。 |
テキストの救急事故時の対応について読み、上級救命講習を受講する。 |
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68 69 |
9. 終末期の 介護 |
1)ターミナルケアのあり方 2)身体面への援助 3)心理面への援助 4)家族への援助 5)医療機関との連携 6)容体急変時の介護 7)臨終及び死後の 対応 |
・生命の尊厳について考え、自らが「生」「死」について深く考察できるようにするとともに、終末期にある人とその家族への関わりについて具体的に学ぶ。 |
介護概論で学習したことを復習してくる。 |
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回 |
テーマ |
授業項目 |
授業内容 |
授業の準備 |
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70 71 72 73 |
10. 介護過程の展開と 記録・報告 |
1) 介護過程の展開 @情報の収集 A分析 B計画の立案 C実施 D評価 2) 記録の方法 @記録の種類 A記録の保管 3)報告の方法 |
・ペーパーシュミレーションを行う。 ・個人及びワークショップを通して検討する。 |
介護概論の「介護過程」の見直しをしておく。 |
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74 |
試験 |
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75 |
まとめ |
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