形態別介護技術
高橋陽子・初貝幸江・古屋なおみ
T.講義概要
1.履修目的
介護の対象となる人々は、小児から高齢者まで幅広い年齢にわたっており、各々が持っている障害も、運動機能障害・聴覚言語障害・視覚障害・内部障害などの身体障害、精神障害・知的障害、さらに、それらの障害を重複して持っている人もおり、多岐にわたっています。
障害を受けた原因や経過も様々であり、このような人々へ介護を提供するためには、障害に対する理解が不可欠です。また、近年、家族関係も多様化しており、高齢者や障害者が生活を送っていくうえでの問題も多くなっています。ノーマライゼーションの理念を理解して、保健・医療・福祉が連携を密にしながら、対象一人一人が、その人らしい生活が実現できるよう、必要な技術を習得することが必要です。特に、介護の対象として関わることが多い高齢者については、加齢による身体的・精神的・社会的変化をふまえ、高齢者とその家族への適切な援助を学びます。様々な障害をもった人々に対する介護技術については、障害の特性を十分にとらえたうえで、適切な介護技術をもって対象のニーズを満たすことができるようにします。
2.履修方法・特色・内容
形態別介護技術は、1年前期・後期、2年前期・後期にわたり学習します。平行して学ぶ介護概論・介護技術・社会福祉概論・医学一般などの科目と統合を図りながら学習することが必要です。
対象の理解を深め、障害者への介護をより深く考えられるように、施設見学や障害を持ちながらもいきいきと生活している方の話しを聞く機会などを設け、様々なメディア(テレビ・新聞・雑誌・映画など)で取り上げられる情報を活用しながら授業を進めていきます。
U.テキスト及び参考文献
新版 介護福祉士養成講座14 「形態別介護技術」 中央法規出版
参考文献は授業の中で紹介します。
・遅刻・欠席のないようにすること。
・シラバスを参考にして予習を十分にして授業に臨むこと。
・授業・ワークショップにおいては積極的に発言し、受身の授業にならないようにする。
・提出物の期限は厳守すること。やむをえない事由以外は遅れた場合は受け取りません。
・新聞、TVなど介護に関係する記事やニュースに常に関心を持つこと。
授業計画 形態別介護技術T(高齢者の介護)1年前期 (方法欄:講―講義・演−演習)
回 |
テーマ |
方法 |
授 業 項 目 |
講 義 内 容 |
授業の準備 |
1 |
ガイダンス |
講 |
形態別介護技術を学ぶ 意義 |
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シラバスに目を通してくる。 |
2 |
第1章 高齢者の介護 1.加齢による変化に対応した介護のあり方 |
講 |
1)高齢者とは 2)加齢とは |
・高齢者の生きてきた時代 VTR「20世紀の映像」 ・加齢の持つ特性 |
身近な高齢者へのインタビュー |
3 4 5 6 |
演 講 |
3)加齢による身体的・精神的・社会的変化 |
ワークショップにより調べ、発表する。 発表内容を基に加齢に起因する生活上の問題及び介護上の問題を理解する。 |
担当する項目について各自調べ、ワークショップに臨む。 |
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7 |
2.家族形態別にみた生活障害と介護 |
講 |
1)家族形態の変遷と問題 |
我国における家族形態の変遷を知り、現在生じている問題を明らかにし、援助のあり方を学ぶ。 |
戦前・戦後の家族形態の違いを調べてくる。 |
8 9 |
演 講 |
2)独り暮らし高齢者・高齢者夫婦世帯の自立生活への援助 |
事例を通して問題を明確に し、援助の内容を考える。 |
配布資料を読み、問題点を抽出してくる。各自居住地の高齢者サービスについての資料を準備する。 |
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10 |
3.寝たきりの高齢者への介護 |
講 |
1)寝たきり高齢者とは 2)寝たきりの原因 3)寝たきり状態から生じる問題 4)介護の目標 |
寝たきりになる原因、寝たきり状態により生じる本人とその家族の問題、寝食分離の意義、残存機能の活用等を理解し、寝たきりからの脱却に向けて必要な介護技術、さらに寝たきりの予防という視点から講義する。 |
寝たきり状態から生じる問題について予習してくる。 |
11 12 13 |
演 |
5)寝たきりの予防に ついて |
ワークショップにより、寝たきりの予防について考え、発表する。 発表を聞き、意見交換する。 |
担当グループごとに話し合い、発表の工夫をする。 |
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14 |
試験 |
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15 |
まとめ |
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授業計画 形態別介護技術U (認知症高齢者の介護・運動機能障害者の介護) 1年後期
回 |
テーマ |
方法 |
授業項目 |
講義内容 |
授業の準備 |
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4.認知症(痴呆性)高齢者の介護 |
講 |
1.認知症の理解 2.原因と経過 3.情緒・行動障害の理解 4.介護の原則 5.日常生活援助 6.家族支援 |
・認知症の利用者を正しく理解し介護方法を理解する。 ・認知症の利用者を介護する家族の苦悩を受け止め支援する方法を考える。 |
実習で関わった認知症の利用者への対応について整理する。 |
20 21 22 |
演 |
7.日常生活の中で生じる不適応行動への対応 |
ワークショップを通して日常生活の中で生じる様々な不適応行動への介護方法を考える。 |
ワークショップの発表を試行する。 |
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23 24 25 |
第2章 運動機能障害者の介護 1.運動機能障害に関する基礎知識 2.運動機能障害者の介護 |
講 |
1)運動機能障害の医学的理解 ・脳血管障害 ・リウマチ ・脳性麻痺 ・筋ジストロフィー ・脊髄損傷 2)日常生活動作の 評価 3)障害の程度 1)運動機能障害により生ずる生活障害 2)運動機能障害者の心理 3)残存機能の理解と活用 |
運動機能障害の原因はさまざまであり、障害により生ずる生活上の問題も多様であるので、それぞれについて具体的に介護方法、適切な福祉用具の選択、活用方法について学習する。 障害を受けた時期も、先天性の場合、人生の途中で受けた場合などさまざまなため、心理面のケアも大変重要となる。 対象に適した装具、車椅子、歩行器などについても学ぶ。 |
テキストを読んでくる。 |
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演 |
4)介護の方法 @移動介護 ・基本的注意事項 ・移動介護の具体的 方法 ベッド〜車椅子 車椅子〜自動車 A食生活の介護 ・調理及び食事 B日常生活における介護 |
各々の障害に応じた方法を具体的に学ぶ。(片麻痺・対麻痺など) 在宅の利用者を想定した介護方法を学ぶ。 運動機能障害者体験で車椅子への移乗や調理など行ってみる。 自助具を作製し演習の際使用してみる。 |
障害者の設定で調理するメニューをグループで考える。 |
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30 |
試験 |
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31 |
まとめ |
授業計画 形態別介護技術V (内部障害者の介護・精神障害者の介護)2年前期
回 |
テーマ |
方法 |
授業項目 |
講義内容 |
授業の準備 |
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32 33 34 35 36 37 38 |
第3章 内部障害の介護 1.内部障害とは 2.心臓機能障害者の介護 3.腎機能障害者の介護 4.呼吸機能障害者の介護 |
講 |
1)内部障害の種類 2)障害程度(等級) 1)心臓機能障害の 医学的理解 2)心臓機能障害により生ずる生活障害 3)心臓機能障害者の心理 4)心臓機能障害者の介護 5)人工ペースメーカー装着者の介護 1)腎機能障害の医学的 理解 2)腎機能障害により生ずる生活障害 3)腎機能障害者の心理 4)腎機能障害者の介護 5)人工透析を受けている人の介護 1)呼吸機能障害の医学的理解 2)呼吸機能障により生ずる生活障害 3)呼吸機能障害者の心理 4)呼吸機能障害者の介護 ・日常生活の介護 ・医療を受けている人への 介護 体位ドレナージ 呼吸訓練 薬物療法 |
近年、医学の進歩に伴い、人工 ペースメーカー・人工透析・酸素療法・ストーマの造設などの治療を受けつつ生活を送る人も増えてきている。 それぞれの内部障害の医学的な理解をする。そして内部障害者の心理を理解した上で、日常生活に及ぼす影響を考慮し、残存機能の活用などを含めた介護について学習する。 ワークショップを通して学び、発表する。また、他グループの発表を聞き、意見交換し理解を深める。 |
施設実習中、内部障害がある利用者に対して考慮されていた介護について振り返る。 |
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回 |
テーマ |
方法 |
授業項目 |
講義内容 |
授業の準備 |
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5.直腸・膀胱機能障害者の介護 6.内部障害を伴う重複障害者の 介護 7.保健医療関係者との連携 |
講 |
1)直腸・膀胱機能障害者の医学的理解 2)直腸・膀胱機能障害により生ずる生活障害 3)直腸・膀胱機能障害者の心理 4)直腸・膀胱機能障害者の介護 ・ストーマ造設者の健康面の管理 ・日常生活の介護 ・排泄物の処理方法 ・ストーマ用装具の取り扱い方法 |
内部障害を抱える利用者に対し、 異常の早期発見、機器の管理などが介護者に求められている。保健医療関係者との連携の必要性を理解する。 |
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39 |
第4章 精神障害者の介護 |
講 |
1)精神障害者の概要 2)精神障害者福祉の動向 |
精神障害を正しく理解し、精神障害者を一人の人として捉え生活障害を 取り除く援助を学ぶ。 |
「精神保健」のテキストに目を通しておく。 |
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40 41 |
1.精神障害に関する基礎知識 |
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1)精神障害の種類と特徴 2)代表的な疾患の症状と治療 |
原因となる疾患やその他の要因を理解する。 |
配布資料を整理する。 |
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2.精神障害者の介護 |
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1)障害により生ずる生活障害 2)保健医療関係者との連携 3)日常生活の介護 健康管理・身辺管理・家事管理等 |
・多様な生活障害を知り、援助方法を考える。 ・施設見学や支援専門職による講義等を通して理解を深める。 |
介護上の疑問点を整理する。 |
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44 |
試験 |
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45 |
まとめ |
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授業計画 形態別介護技術W(知的障害者の介護・視覚・聴覚及び言語障害者の介護) 2年後期
回 |
テーマ |
方法 |
授業項目 |
講義内容 |
授業の準備 |
46 |
第5章 知的障害者の介護 1.知的障害に関する基礎知識 |
講 |
1)知的障害者福祉の動向 2)知的障害とは 3)原因 4)程度 |
知的障害を生じる原因と生活上の問題を理解し、日常生活を支え、社会の一員としてよりよい生活ができるよう援助する方法を学ぶ。 |
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47 |
2.知的障害者 の生活の理解 |
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1)知的障害者のライフステージ 2)知的障害からくる特性 |
ビデオを通して生活を理解しライフステージごとの目標を明確にする。 |
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48 |
3.知的障害者の介護 4.家族への援助 |
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1)介護者の持つべき姿勢 2)知的障害のある高齢者の介護 |
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49 |
5.知的障害者の生活の実際 |
見学 |
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施設見学を通して学びを深める |
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50 51 52 |
第6章 視覚障害者の介護 1.視覚障害に関する基礎知識 2.視覚障害者 の介護 |
講 |
1)視覚障害の医学的 理解 2)視覚障害の定義 1)視覚障害により生ずる生活障害 2)視覚障害者の心理 3)残存感覚機能の特性と活用 4)地域社会とのかかわり 5)介護の方法 視覚の代行と福祉 用具 |
・視覚障害の原因を知り、障害により生ずる問題を理解する。 ・障害者の心理を理解し、自立へ向けての援助を学ぶ。 ・多様な介護方法を知り実践できるようにする。 |
実習を通して関わった視覚障害者について整理しておく。 |
回 |
テーマ |
方法 |
授業内容 |
講義内容 |
授業の準備 |
53 54 |
3.介護技術 |
演 |
1) 移動・歩行介護 2) コミュニケーション ・点字 (形態別介護技術Xで学習する) ・情報機器 3) 日常生活の介護 |
・社会の中で視覚障害者に対してどのような配慮があるか知り移動介護方法を理解する。 ・視覚障害者との適切な関わり方を理解する。 ・施設見学や障害者が活動している場などを通して学びを深める。 |
ガイドヘルプを実践できるようにする。 |
55 56 |
第7章 聴覚及び言語障害者の介護 1.聴覚・言語障害に関する基礎知識 2.聴覚・言語障害者の介護 |
講 |
1)聴覚障害の医学的理解 2)言語障害の医学的理解 3)聴覚・言語障害の定義 1)障害により生じる生活障害 2)聴覚・言語障害者の 心理 3)残存感覚機能の特性と活用 4)地域社会との関わり 5)介護の方法 |
・聴覚・言語のコミュニケーションの手段としての重要性を知る。 ・聴覚・言語障害の原因を知り障害により生ずる生活上の問題を理解する。 ・具体的な介護技術について学ぶ。 |
実習を通して関わった聴覚及び言語障害者について整理しておく。 |
57 58 |
3.介護技術 |
演 |
1) コミュニケーション介護 ・筆談 ・読話 ・手話 (形態別介護技術Xで学習する) ・補聴器等福祉用具 2) 日常生活の介護 健康管理・身辺管理・家事管理・日常生活上福祉用具 |
・コミュニケーションを図るための技法、福祉用具などについて学ぶ。 ・社会の中で聴覚・言語障害者に対してどのような工夫がなされているか知る。 ・施設見学や障害者が活動している場などを通して学びを深める。 |
コミュニケーション手段を調べる。 |
59 |
4.重複障害者の介護 |
講 |
1) 重複障害の定義 2) 高齢者の重複障害 |
・重複障害の原因を理解し生活上の問題を理解する。 |
高齢者の重複障害を整理する。 |
60 |
試験 |
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61 |
まとめ |
注「点字」「手話」は形態別介護技術Xで各7回(各14時間)学習する。
形態別介護技術X(点字)
高橋 倫花
T.講義概要
1.履修意義:視覚障害者にとって点字は欠かせないものです。一方、近年はパソコン等の発達により、目が不自由でも情報の収集・発信が容易にできるようになってきました。また、バリアフリーやユニバーサルデザインの考えが普及し、障害者や高齢者も暮らしやすい環境が整いつつあります。
しかし、重度の視覚障害者が本当に社会参加していくにはまだまだ困難が多いことも事実です。
こうした現状を理解し、コミュニケーションの手段のひとつとしての点字を学ぶことで、視覚障害者の実情や必要な介助について考えていきたいと思います.
2.授業方法:講義と実践・ディスカッションを通して点字の読み書き及び
視覚障害者への誘導や説明の方法を学びます。
3.履修内容:視覚障害のある講師と接しながら、視覚障害者の実情と必要な介助、点字の読み書きについて学びます。
U.テキスト
全国伺覚障害者情報提供施設協議会編集・発行の『はじめての点訳ー視覚
障害者介護技術シリーズ1』
V.評価方法
授業態度及び点字のテストから評価します。
授業計画
回 |
授 業 内 容 |
授業の準備 |
1 |
視覚障害者への接し方と点字を読み書きする際のポイント(1) |
テキストの以下の部分を読む。 「点字の概要」(p10) 「点字を書く器具」(p12) 「点字を書くときのポイント」(p14) 「視覚障害のための不自由さ」(p57) 「視覚障害者への接し方」(p59) |
2 |
視覚障害者への接し方と点字を読み書きする際のポイント(2) |
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3 |
助詞と長音符の扱い方 |
テキストの「点字の表記」(p18)の部分を読む。 |
4 |
数字の書き方 |
テキストの「数字」(p22)の部分を読む。 |
5 |
点字の読み方 |
テキストの「点字の読み方」(p16)の部分を読む。点字の一覧表を見て凹面と凸面の違いを確認する。 |
6 |
アルファベットの書き方 |
テキストの「アルファベット」(p25)の部分を読む |
7 |
分かち書き |
テキストの「分かち書き」(p29)の部分を読む。 |
形態別介護技術X(手話)
永井 まち子
T 講義概要
1履修の意義
聴覚障害者は、その障害が外部から見えないために理解されにくいものがある。聴覚障害はコミュニケーション障害とも言われ、他者との関わりの中でその障害がより顕著になると考えられる。
日本語とは別の言語であるといわれる手話を第一言語とするろう者が介護を受ける際に少しでも安心して受けられるようにする事が大切である。
@聴覚障害者のコミュニケーション方法を主に手話を通して学び、聴覚障害者への理解を深めると共に、より適切な介護ができるようになる。
A手話やその他のコミュニケーション方法を具体的に理解し、実際にやってみることで身につける。
B手話等を学ぶことで、聴覚障害者と簡単な会話ができるようになる。
U テキスト
講師作成のテキストを使用する。
V 評価方法
授業態度と、最終回に於ける聴覚障害者との会話実践の状況と
実技試験により評価する
注意事項:手話は視覚言語であることからも、授業中は講師や手話をする人を
見ること。
授業計画
回 |
テーマ |
授業内容・方法 |
授業の準備 |
1 |
始めに |
聴覚障害者と接するときの注意名前と挨拶 |
テキストを読んでくる テキストは毎回持参のこと |
2 |
コミュニケーション方法 |
聴覚障害者とのコミュニケーション方法 (指文字・筆談・口話等) |
自分の名前と挨拶などを できるようにしてくる |
3 |
身振り |
身振りで伝える |
指文字で表す、指文字を読み取る事ができるようにしてくる |
4 |
会 話 |
数の表し方と疑問詞「いつ」 |
手話と指文字を復習してくる |
5 |
会 話 |
疑問詞「何」「なぜ」「誰」「どこ」 |
数字・疑問詞など復習してくる |
6 |
会 話 |
実用的な例文を使って |
疑問詞を使った会話を練習 |
7 |
会 話 |
これまでに学んだコミュニケーション方法を使って実際に聴覚障害者と話をする |
今まで学んだコミュニケーション方法を確実に使えるようにしてくる |